痛快トーク−樋口恵子・上野千鶴子・春日キスヨによる「超高齢社会を拓く」

 女優・市原悦子の「おっとりトーク」から、舞台はフェミニスト女遊(じょゆう)人の「痛快トーク」へ。広島では最初で最後と思われる市原講演と樋口恵子・上野千鶴子・春日キスヨ鼎談とあって、1500人の会場は早くから満席。「チケット売りすぎ!」とのブーインクの中で、急遽、別室にスクリーン観客席が。900人がまさしくスクリーンで「女優」をみることとなった。私は車椅子の友人と出かけたため、そこは高齢・障害者にやさしい会場セッティング、幸いにも前の席に案内された。私たちの横には介助犬を連れての参加者もおられた。

 ヒロシマを飲み込んで日本は長寿国になった。4年前の9.11テロ事件は平和の枠組みを大きく変えた。明日9.11は思いもしなかった衆議院選挙日。この広島全国大会が我々の将来を決める大会にならんことを願って――名司会者でも知られる樋口さんの進行は、「希望の見える超高齢社会」へ参加者を連れて行ってくれるジャンボジェット機に乗ったような感じで、スリル満点、充分に楽しめたが、着地点はそれぞれ違うだろう。

 テーマはおよそ4つ。@介護保険の課題A一人暮らし老人が安心で安全に生きるためにB団塊世代の老後C高齢当事者の自己主張が社会を変える。
私は自分の介護をめぐる「過去・現在・未来」を重ね合わせながら、3人のトークを聞いていた。
まだ介護保険制度がなかった時代、痴呆歴10年の母を特別養護老人ホームで5年前に見送った。「年金で一人暮らしができる幸福な時代」を辛うじて生きた母。だからこそ、子どもも「母の介護」を放棄せずにすんだ。

 いま、「半介護(介護度2)」を必要とする友人(75歳)の「半介護人」として週の半分以上を同居、ヘルパーが週2回入っている。「私は家族主義」といった樋口さんと同世代の友人。男社会で仕事をしてきた女性の老後。また、20年一緒に仕事をしてきたとはいえ、家族がいることを前提とした介護保険の中で、「介護をする側・される側」に関係が変わってくると、友人といえども「介護をめぐる一通りの葛藤」を抱えているのも現実。「家族」もやさしくなれないが、ことによっては「他人」もやさしくなれないこともある。だから2人でトークを聞きにきたというものだ。

 そして私自身の「介護」。「花の50代」半ばをすぎた「団塊の世代」。不安定な自営業的生き方を長く続けてきたから、まったく年金を当てにできない。子どもは2人いるが(男はいない)、後は好きにやってくれ!と20歳で放つのが精いっぱい。老人虐待を受ける(笑)可能性もあるので全く当てにしていない。さて、では私はどうするのだろう。

 介護保険は「心のバリアフリー効果」「医療と福祉のネットワーク効果」「住民の意見を反映するサーチライト効果」(樋口)をもたらしたのは確かだ。「身体介護と家事介護の利用料格差と安価の是正」「介護への人材・思い・エネルギーはあるのに評価がない」(上野)「介護の重度化と多重化問題」「家庭内独居一人暮らし問題」(春日)があるのも確かだ。現在の「介護問題」が明確に提示されて、頭の整理がついた。

 そこで、再び私の「介護体験」を振り返る。やっぱり上野さん流「在宅で単身(個)での看取り保障がある介護体制」が、私も原則だと思う。そのためなら少々高い保険料も覚悟できる。その上で、「一人の要介護者にたくさんの目と手がある」(上野)ことを、仕組みとしても保障され、個人の生き方としても準備していくしかないのではないか。

 「たくさんの目と手」というのが「家族」であり「地域」だという人も多いだろう。が、介護保険があるこれからは、私は「介護保険と友だちネット」のセットに期待をしている。さて、この着地点は甘いだろうか、辛いだろうか。

参加者・高雄きくえ(広島)
inserted by FC2 system